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第十九話「快傑・狼仮面(テンプウさんの過去話 その1)」





第十九話「快傑・狼仮面(テンプウさんの過去話 その1)」(前編)







暁国、白峰県の隣の県。高島県。
その中の辺境、雛見団地。そこに在る人間・赤羊総合の孤児院「涙奉仕(ナミダボウシ)」。



約30人のみなしごが共同生活を送っているその孤児院で
毎日毎日、砂遊びばかりしている、白い狼のヘルメットを被っている子供が一人居る。

ヘルメットの額部分には綺麗な字体で「この世界の白一点」という文字がマジックで書かれている。
白い子供用の学ランを着ていて、延々砂遊びをしている事もあって、周囲で遊ぶ子供達から激しく浮いている。

砂で作っているのは当時流行していた「仮面ライダーRX」の精緻な彫像。
その作品の出来を評価する子供も彼の周囲には居たが、誰もソレを口に出さなかった。

彼と関わる事で集団から疎外される事を、どの子供達も本能的に恐れていたからだ。


狼のメットを被った幼児の名前は「星街・天風(ホシマチ・テンプウ)」という。
他の子供達が気付いた時には既に砂場に居て、
毎日、テレビ放送の中で活躍するヒーローの彫像を象り続けていた。







その日、テンプウが黙々とヒーローの彫刻を象っている後ろに
一人の奇抜な格好をした幼女が立っていた。


三日月型の黒い帽子を被り、クリーム色の髪をいくつも三つ編みにし、
子供用の白衣を着ている。


周囲で遊んでいた子供達は、その奇抜な格好をした幼女を
ときおりチラチラ見ながら、恐れ慄いた表情を浮かべていた。

超然とした態度と、奇抜な格好が、彼女の周りに異様な空気感を醸しだし、
異質性を存分に周囲にアッピールしていたからだ。

幼女は邪悪な笑みを浮かべ、テンプウの背中とスコップによる作業を
凝視し続けている。


テンプウは数分前からソレに気付いていたので、
苛立ちが次第に高まっていっていた。


「…嗤ってんのか…?」


振り返らずにテンプウは幼女に話しかけた。
彫像の形を整える作業を止める気配は見せない。


後ろで幼女の「ケタケタ」という下品な笑い声が聞こえる。
テンプウの苛立ちが更に上がる。


「雰囲気は硬派なのに…」
「やってる事はそんなに可愛いの…」
「おかしいなって思ってサ」
「カナエはね…。周囲から浮いてる人が気になっちゃう性質(たち)なんだ…」
「『自分を持ってる』って感じがしてサ…」
「大人はそんな事言っても、鼻で嗤うんだけどね…」


カナエというのは恐らく、話している幼女自身の名前であろう。
テンプウは作業を止めずに続けている。


「その『自分が自分が』っていうの…イイと思う」
「一歩道を踏み外したら『悪』に染まっちゃいそうな…」
「危うさがまた…」
「スリリングでね…」

「協調性や社会性が正義とされる世界に…」
「カナエは嫌気がさしてるんだよ」

「カナエはどうしようもなく人と違う存在に生まれついてんのに…」
「真っ当に生きていく為に相応の社会性や協調性が求められてしまう…」
「カナエにだけ、酷い無理をさせようっていうの…?」

「とても理不尽だと…思わずには居られなくてさ…」


テンプウは話を続ける幼女の方に頭を向ける。


「人と違うとは、赤羊に生まれついた事を言ってるのか…?」
「なら、赤羊同士で馴れ合う術を探せば…」


「このドバカッ!君の口からそんな言葉が出てくるなんて、許せないよ」


幼女は鋭く切り返して、テンプウを驚かせる。
幼女はさらに呼吸を整えた後、言った。



「カナエの名前は細木・叶(ホソギ・カナエ)」
「世界でたった一人の大脳特化型赤羊サ」


「君とは異質さの格が違うんだ」
「そして、そんな事で優越感を感じちゃうクソヤローだよ」


「ねェ、テンプウ君」
「カナエにとっても、人と協調する事は、そんなに大事な事なのかな…?」
「カナエはそんな努力を通して、本当に幸せになれるのかな…?」


カナエは透き通るような声色で、テンプウに疑問を投げかけた。

テンプウはついに砂場の作業を終える。

興味のある人物が、興味のあるテーマを投げかけてきたからだ。








カナエは自由奔放であったが、自分の気持ちと職務は分けて考えるタイプであり、
自分自身の趣味よりも兵器開発に多くの時間を割く、社会に優しい大脳特化型赤羊
であるように周囲からは見られていた。

歴代の大脳特化型赤羊では、自分の趣味の研究を大事にしないタイプは
若干少数派であったので、彼女は「優秀な大脳特化型赤羊」として誉れ高い存在であった。


彼女と親交を続ける事になっていたテンプウは、
いつもプライベートで「我が我が!」という言動を繰り返している
彼女を見ていたので、彼女が真面目に社会に貢献する態度を見ていて、幾らかの違和感を感じていたが、

「そういう事もあるか」と、結局あまり気にしないでいた。



そんなカナエであるから、繋がりのある企業からも格別の扱いを受けていて、
膨大なコネクションを持つVIPな存在でった。


そんな中で、ある時彼女は、「マジで」仮面ライダーRXのような存在になる事に憧れていた
テンプウを「地方中枢都市・赤羊自警団」なる組織に推薦した。

地方中枢都市である所の高島市に駐屯する部隊であり、街の治安を維持する役目を持っている。
そのほとんどが赤羊で構成されており、彼らの首には爆弾付属の首輪が装着される。

命令無視が行われると即、首輪は爆発させられる。
都市内での日常の自由も皆無。

そんな過酷な条件の職業であったが、本来、奴隷である赤羊が就ける職業としては、
極めて例外的で超レアなモノであった。



テンプウは、元々彼が目指していた「正義のヒーロー」の像と
自警団のイメージがかなりかけ離れていた事に不満を持っていたが、



「まァ、足かけのつもりで良いから、やってみるのも良いサ」
「あと、仮面ライダーRXっていう職業はこの世に存在しないから」

とカナエに適当に諭され、
実際は、未来にソレ以上の希望も見出せないような気がしていたので、

腹を決めて、入団する決意を固めたのだ。


























第十九話「快傑・狼仮面(テンプウさんの過去話 その1)」(中編)






カナエは偏執的に「正義」という概念に拘っているテンプウに、
自分でもかなり執着し、
自分の開発している兵器や工業機械の話をしに
よく彼を訪ねてきた。

彼女は造船業の発達した高島の研究所に居を構えており、
あまり各地に出向いて行く事もなく、
努めて模範的に振舞っていた。



テンプウと話す時だけ、自分の中の大衆との異質性を
何度も何度も、数え切れないほど訴えていた。


一つの考えに固執するあまりに周囲から浮いているテンプウとしては、
「客観的には」周囲と上手くやっているカナエが
そんな素っ頓狂な悩み(?)を持っている事がイマイチ理解できず、

それほど真面目には相手をしないでいた。


時に、カナエの訴えは涙交じりの悲壮なモノになり、
テンプウは一度、


「自分で自分の悩みを無暗に大きくしているようにしか見えない」
「俺と同じで、お前の精神的孤立の原因はお前の強い思い込みに起因してるんじゃないのか」

「そんなんじゃ人に同情してもらえないだろ」


と言ってやった。

そうしたらカナエは、




「テンプウ君にしかこんな話しないから…」
「同情してほしいわけじゃないのサ」


「…君が正義正義って言う度にさ…」
「圧倒的な少数派(マイノリティー)である所のカナエのココロが」
「チクチク刺されてるみたいでさ…」

「その痛気持ち良さが心地よくて…」
「テンプウ君の前で自分を出して、ちょっかい出してんのサ」



と、歯切れの良い口調で、照れ笑いしながら言った。


ちょうどテンプウは街のパトロール中であり、海の傍の造船所の隣であった。

カナエの訴えがテンプウにはニワカに理解できなかった。

孤児院に居た頃からさらに年齢を重ね、「公徳心」の発達しつつあった
テンプウには寝耳に水であった。


自分は赤羊でありながら「社会に資する気持ち」を抱く事に心地よさを見出せる
才能を持っているのだと、自分の事を誇りに思っていた。


法律を犯し、道徳に反する行為を行う者を犬畜生以下だと感じ、
そういう人々を取り締まったり、時には駆除する事に何の良心の呵責も感じない、
蓋を開けてみれば、最初に思い描いた正義のヒーローにかなり近しい存在になっていたと自負していた。



「テンプウ君の、『過剰に自分を信じ込める才能』が…ちょっと羨ましかったのサ」



ニコッと笑って、カナエは言葉をつけ加える。
テンプウは納得できずに言い返す。



「…人を知恵足らずみたいに言いやがって…」
「お前は自分が被害者だって言いたいのか?」


「お前は力を持ってて、ソレを社会の為に使ってるじゃないか」
「力を持ってて、ソレを社会の害になる使い方で使っちまう奴が、俺の取り締まる対象だ」


「だから俺とお前は馴れ合える。お前だって俺と同じ側の人物なんだよ」
「なんで社会の役に立てる能力を持ってて、役に立ててるのに、自分に自信を持てないんだ?」


「社会の役に立てても、その能力自体が他の奴等と較べて異質だからか?」
「そんなの重要な事じゃねーよ」


「精一杯、社会の役に立とうとしてるのかどうかが問題なんであった…」
「能力の性質が違う事自体には大して意味は無い」


「なんでお前の胸がチクチク痛まなきゃなんないんだよ!」
「おかしい!」




テンプウは拳を握り締めてまくし立てた。

カナエは不健康そうな笑みを浮かべながら、少し斜めになって立っていた。
そして、しばらくしてから、また喋りだす。




「…無理してんだよ」
「カナエのココロはもうパンク寸前だ」


「どうすればガス抜きできるのかなァ…」


「…才能ってあるじゃん」
「カナエは残念ながら、大多数に流されて迎合する才能が無いんだよ」


「思い込みなんかじゃァないのサ」
「この世にはもっと根の深い問題がたくさんある…」


「皆が皆、その胸に正義を宿せるとは限らないなぁ…」
「テンプウ君も知っての通り、そういうのも才能だから」



「もう一回言うけど、カナエにはそういう才能が無いみたいだなァ…」
「新しい工業製品を設計できる才能なんて要らないから…」
「大衆に迎合できる才能が欲しかったって思うのサ…」

「最近はね…」




言い終わると、カナエはプイと後ろを向いてしまう。


テンプウは苛立ちを覚えながら、拳を握り締める。
見えない角度から殴られたような、不快感がカラダに残っている。




「…あ…でもコレはコレでガス抜きかな…」


「諦めるなよ!」



さらに話し始めたカナエの声にテンプウの大声が被さる。

立ち去ろうとしていたらしいカナエの足が止まる。




「お前は今のままで良いんだ」
「社会の部品でいる間は…」
「社会はお前を受け容れられるぜ」


「誰しも、そういうのはストレスだろうさ」
「元々自分がそうであった形とは違うモノに変化するわけだから…」


「そのストレスに程度の差はあるだろう…」
「特にお前にとってはその程度がとても大きいってのは、間違いなく事実だろう」


「なんたってお前は、世界でたった一人の大脳特化型赤羊なんだ」

「…でも、ソレでも我慢してくれとしか言えねえよ」


「理解るか?パンクしちまったお前と、俺はもう会う事はできないんだ」
「俺の思い込みの激しさが、この世の歪みを許せない」


「俺は俺でない何かになりたくないんだ」
「お前のおかげで変化できた今の俺を…俺は痛く気に入ってるんだ」



カナエはテンプウの言葉をじっと聞いている素振りを見せていて、
またしばらくして、緊張を解いた。


テンプウはカナエが実際に何を考えているのか、イマイチ飲み込めずに居たが、
それ以上は何も言えずに、カナエの次の動きを待ち続けた。


そして、カナエはまた話しだす。



「…有難いんだけどサ」

「公徳心が発達して、テンプウ君は素晴らしい男性に成長したと思うんだけどサ」


「…なーんか、そんな風にお行儀良い事言われれば言われるほど、テンプウ君を遠くに感じるよ」
「捻くれ者だからね。カナエは」



何の気負いもなく歯切れの良い口調でソレだけ言うと、カナエはツカツカ歩き去って行ってしまった。



肩を落としたテンプウは、それでも自分の言える精一杯を伝えたと思っていたが、

なんともいえない気持ちの悪さを胸に抱えていた。



初めから理解っているべき事だったろうが、
テンプウはカナエのココロの読み取れなさ加減に、恐怖のような感情を抱きつつあった。




















第十九話「快傑・狼仮面(テンプウさんの過去話 その1)」(後編)





そして、テンプウが15歳になった頃、自警団でも指折りの戦闘力を
有するようになっていたテンプウは高島市に潜伏する怪しげな宗教団体の
本拠地を追っていた。




その宗教団体の名は「色即是空(シキソクゼクウ)」という。
その団体は財源がハッキリしていないが、何らかのテロ行為を画策している
組織であるという情報が入っていた。



「空(クウ)」とは彼らの崇拝する教祖の事であり、別の呼称で「ダース・ニョライ」
と呼ばれている人物であった。



テンプウは突き止めたアジトに小隊を率いて突入した。



自律型のエニグマで武装された通路を多くの犠牲を払いながら突き進むテンプウの小隊の隊員は、
少しずつ消耗されていき、最後にはテンプウ一人となる。



通路を進みながら、本格的に死を覚悟してゆくテンプウは他愛ない思索を巡らせる。



自分が「仮面ライダーRX」という偶像的な正義に縋り付いたのは、
それだけ自分の存在に自信が無かったからだ。

正義のヒーローは皆が認めてくれる存在だという妄信的な思い込みがあった。


コミュニケーション能力に関して大多数の赤羊にすら劣る自分が
どのように「この残酷な世界」で生き抜いていくか考えた時に、
なし崩し的に出てきた答えが、武力によって皆の役に立つ事であった。


幼いテンプウのココロは、その生存本能によって
仮面ライダーと一体化する道を欲した。


生き残らなければ何の快楽も得られない。性欲も何もかも充足する事ができない。
彼の中の正義の始まりは、彼の凄まじい生存本能が牽引したモノだった。


そんな雑な分析が頭を巡り、
可愛らしい自分の本性に今頃、少しの愛着が湧いた。


だからこそ、此処で死ぬのも悪くないかもしれないと思えたのだ。










テンプウが最後に辿り着いた広い部屋は巨大なラボラトリーの様相を呈し、
無数の工業機械がせわしなく動き、工業用の油の匂いでギトギトのココロも荒むような場所だった。




前方のステージの上に人影が立っている。ソレを見てテンプウは目を疑った。


自分と瓜二つの「黒い狼のヘルメット」を被った白衣の人物が
何気ない姿勢でテンプウの方を見下ろしていたのだ。




ヘルメットの眉間の文字は「一切が空」。




小脇に円筒状の緑色の液体に満たされた不気味な物体を抱えている。
そして、テンプウは黒い狼のヘルメットの人物の放つ独特の精神エネルギーに
感じた覚えがあった。




テンプウが冷や汗をかく中、狼のヘルメットの人物は話を始める。




「…よくぞ此処まで辿り着いた…!勇者よ…!いや、むしろ、快傑・狼仮面…!」


「味気ない別れは寂しいからな…。言い訳を聞いてもらう為にわざと…情報を漏らさせてもらった」

「すっかり職業人になったお前にならお馴染みかもしれないが…
 優等生気取ってる奴ほど、腹の中には化け物を飼ってるモノなのサ…」


「つっても、他の奴等はともかく、お前は気づいてただろうけどね…」



狼のヘルメットが勢いよく放り投げられる。




「カナエの…本質に…」



ホソギ・カナエの媚態を込めた邪悪な素顔が露わになる。



「お前にはずっとカナエの本当の姿を見せてきた…」
「カナエを止めるチャンスも…」
「息の根を止めるチャンスも…」
「いくらでもあった筈サ!」


「どんな奴が悪い奴なのか、よく利く鼻で嗅ぎ分けられるようになったテンプウ君でも…」
「カナエだけは生かした…!その理由は…『共感したから』だろう…?!」


カナエの顔がさらに歪み、生命力に溢れた嬌声でケタケタ甲高く笑いだした。
天井を向いて数瞬制止したあと、また媚態を帯びた目で挑発的にテンプウを見据える。



「正義に対して真摯なテンプウ君でも…共感できる奴は『仲間』だって思いたがっちゃったんだよね…」
「カナエもお前の事は仲間だと思ってたよ」



「でも所詮、公徳心はお前の感情と完全に重なりはしない…」



「お前は高島県という巨大な生命体の免疫系に組み込まれた白血球の一粒に過ぎない…」
「組み込まれたお前は『自分の夢』を見る事なんてできないんだよ…」

「『社会の見た夢』を少しでも実現する為にあくせく動き回る意志無き細胞…」
「ソレがテンプウ君のもう一つの顔だよね…」



カナエは昔していたみたいに、少し斜めになって自分の身体を支えた。



動きそのものが、何かをテンプウに伝えたくて、必死になっているような様相を呈する。



「テンプウ君は捻子になった。棒になった。歯車になった」
「カナエは捻子になれなかった。棒になれなかった。歯車になれなかった」


「正しくない者は公徳心に磨り潰されるのを待つだけサ…」



斜めに立っているカナエはまだその瞳に挑発の光を宿している。



「テメェ!黙って聞いてりゃ…これまでの復習みたいな頭の悪い事をダラダラ述べやがって…!」

「何しようとしてやがる!面白くねェんだよ!」

「お前は単に『尖ったナイフ』である期間が長かっただけだ!」

「まだ中学生の年齢だ!取り返しはつく!」



テンプウはカナエの脇に挟まれている不気味な物体に注意を払いながら、
恐れおののきつつ怒鳴り声をあげた。



「…御免なァ…?決意は固い方だ」
「そりゃもうこの地域で造られる戦艦みたいになァ…?」



カナエはギョロリと開いた目をしきりにウインクさせて
さらにテンプウを挑発する。


「公徳心に磨り潰される運命を待つのみの『不確かなレモネード』は…」
「それでも生きてる…」

「生に足掻く気持ちを持ってる…!」
「どんな生き物でも持ってる大事な宝物…『自己保存の本能』…!」


「何があっても自己を保存したい…」
「欲しい欲しい欲しいって気持ち…命を示して続けたい…!」

「そんな気持ちが『悪』の源泉なんだ…!」


勢いに任せて、カナエは緑色の液体に満たされた物体を頭上にかかげる。
物体は鈍く輝き、テンプウに威圧感をぶつけた。



「カナエの『はじめての悪』は、『さいごの悪』と同義…」

「そして『はじめての悪』は『この魔界の地球のさいごの悪』と同義なのサ!」


「カナエの未来が発情したから…」

「これがカナエにできる…世界に対する精一杯の求愛行動…」

「ただ生を欲して!」

「他の全ての生物を喰らってでも…!」


身構えるテンプウは物体の正体を直感して、驚天動地の臨戦態勢に入っていた。
緊急事態と思わざるをえない。



「この地球破壊爆弾…『異邦人(サタナチア)』が…」
「カナエのなけなしの気持ちだ…」



「受け取って…!地球よ…!世界よ…!テンプウ君よ…!」
「カナエは冗談を言うタイプではない…!」


カナエの甲高い声がラボラトリー内に響く。

テンプウは双剣を握り締め、己の過去に存在する、無限の暇な時間を悔いていた…。









(続く)     次回、「テンプウさんの過去話」、終結。









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